多くの金属加工業者は、プラズマ装置で切断された部品のドロス除去のために研磨や削り取り、やすりがけなど、後処理に多大な時間とコストをかけています。切断品質を左右する変数が多数ある中、オペレーターは、どのようにトラブルシューティングを開始しますか?重要なプロセス変数を管理すれば、オペレーターはドロス問題を最小限に抑え、後処理やスクラップ発生に伴うコストを削減することができます。

ドロスは、切断中にカーフから完全に放出されない酸化溶解金属が再度固まったものです。これはプラズマ切断で最も一般的な問題です。ドロスは、材料底面に厚みのある泡のように蓄積するもの (低速ドロス) とまだ切断されていない材料に小さい硬いビーズのように形成されるもの (高速ドロス)、そして材料上部表面に薄く塗布されるもの (トップスパッター) があります。

ドロスの形成は、トーチの移動速度、スタンドオフ(トーチと材料の間隔)、アンペア数、電圧と消耗部品の状態など、多数のプロセス変数に左右されます。材料の厚さや金属の種類、等級、化学成分、表面の状態、平らさ、切断中の金属内の温度変化など、材料の変数にも影響されます。しかし、ドロス形成に関する最も重要な変数は、切断速度、アンペア数、スタンドオフ距離の 3 つです。

低速ドロス

切断速度が遅すぎると、プラズマジェットがより多くの材料を切断しようとします。アークカラムの直径が大きくなり、カーフが広くなって、プラズマジェットの高速部分が切断部分から溶解物質を押し出さなくなります。その結果、溶解物質がプレートの底部の端に沿って球状に厚く形成されます。これは低速ドロスと呼ばれます。速度が極度に低下するとアークが消えます。これはトランスファーされたアークを維持できるだけの金属がなくなるからです。アンペア数を増やすかスタンドオフ(トーチと材料の間隔)を減らすと (材料厚と切断速度は一定に保つ)、切断速度を落としたときと同じような影響が出ます。これらの変更はどちらも、プラズマジェットからのエネルギーが一定期間に一定範囲の材料に接するようにします。アンペア数の超過やスタンドオフの削減も低速ドロスの原因となります (プラズマ切断で角にいくらかの低速ドロスが生じるのは正常です。これは鋭い角では切断速度が常に一定に保たれないためです)。

低速ドロスを排除するには:

  • 切断速度を 5 インチ/分ごとに加速する
  • スタンドオフ距離を 1/16 インチごと、または 5 ボルトごとに増加する
  • 10 アンペアずつアンペア数を低下させる
  • これらの方法でも切断品質が向上しない場合は、ノズルサイズを小さいものに替えることをお考えください。

高速ドロス

切断速度が速すぎると、アークがカーフの後ろに遅れるようになり、まだ切断していない材料に小さな硬いビーズが残ったり、材料底面にドロスがロールオバーするようになります。高速ドロスはより頑固で、除去するために機械の利用が必要です。速度が極度に高速になると、アークが不安定になり、カーフ内で上下に揺れて、スパークや溶解金属が跳ね上がるようになります。こうした速度では、アークが材料に貫通しなかったり、消えてしまうことがあります。

スタンドオフ (トーチと材料の間隔) が多すぎる、あるいはアンペア数が低すぎると (一定の材料厚と切断速度で)、これらの変化がプラズマジェットのエネルギー低下を招くので、高速ドロスの原因となることがあります。

高速ドロスを排除するには:

  • まずノズルを調べ、摩耗 (ガウジング、オリフィスの拡大や楕円化) がないことを確認する
  • 5 インチ/分ごとに切断速度を下げる
  • スタンドオフを 1/16 インチごと、または 5 ボルトごとに低減する
  • アンペア数を増やす (ただし、ノズルのオリフィス定格の 95% を越えないようにする)

上部のスパッタードロス

トップスパッターは、切断材料の上部に飛び跳ねた溶解金属が固まって蓄積したものです。これは普通は簡単に除去できます。一般に、摩耗したノズル、切断速度の超過、スタンドオフ (トーチと材料の間隔) の過剰が原因です。プラズマジェットの渦巻きの流れが原因となっている場合は、カーフの底ではなく前面に向かって溶解金属が特定の角度に飛び跳ねます。

上部のスパッタードロスの除去:

  • まずノズルを調べ、摩耗がないことを確認する
  • 5 インチ/分ごとに切断速度を下げる
  • スタンドオフを 1/16 インチごと、または 5 ボルトごとに低減する

切断速度が切断品質に与える影響

ドロスの例

切断速度が最適

 

切断速度が速すぎる

 

切断速度が遅すぎる

ドロスフリーのエリア

高速ドロスと低速ドロスの間に、ドロスフリーあるいは最小限のドロスしか生じないエリアがあります。このエリアを発見することは、プラズマ切断された製品の後処理を最小化するための鍵となります。

このエリアは、使用されるプラズマガスによって変化します。たとえば、窒素とエアのプラズマガスでは、炭素鋼のドロスフリーの枠は比較的狭くなりますが、酸素プラズマではドロスフリーの枠が広がります (酸素プラズマガスは炭素鋼に反応して細かい溶解金属のスプレーを発生させ、これらの小滴は表面張力が低くなっています。この溶解金属のスプレーはカーフから簡単に放出されます)。

金属の種類もドロスフリーのエリアに影響します。たとえば、冷間圧延鋼は熱間圧延鋼よりもきれいに切断でき、酸洗鋼は酸洗されていないものよりきれいに切断できます。

最適な切断速度を決めるには:

  • 方法 1:さまざまな切断速度で一連のテスト切断を行い、最もきれいに切断できる速度を選びます。ラグライン (切断表面の小さな隆起) が切断速度の良い目安となります。切断速度が遅いと、ラグラインが材料の面に対して垂直になります。切断速度が速いと、材料底面端に並行に斜めの S 字ラグラインが形成されます。ラグラインを調べることで、オペレーターはドロスフリーの枠を見つけるために切断速度を速くすべきか、遅くすべきかを判断することができます。たいていの場合、オペレーターはドロスが見られたら、まず装置の切断速度を下げ、それから徐々に必要に応じて速度を上げるようにしています。

  • 方法 2:切断中に (適切な溶接用レンズを使用して) アークを観察しながら、動的に切断速度を変えて、最適なアーク特性を見つけます。これを行うには、ワークピースの下に見えるアークの角度を注意して見ます。プラズマガスで切断している場合は、アークは切断の下側から出ているように垂直に見えるはずです。窒素またはアルゴン/水素では、かすかに後ろを行くようなアークが最適で、酸素プラズマガスでは、アークがかすかに先行するときが最適な切断速度です。