多くの金属加工業者は、プラズマ装置で切断された部品のドロス除去や寸法修正など、後処理に多大な時間とコストをかけています。ここでは、プラズマ切断された部品の寸法精度に影響する重要なプロセス変数について説明します。これらの変数を注意深く管理すれば、オペレーターは寸法精度問題を最小限に抑え、後処理やスクラップの発生に関連するコストを削減することができます。

小さな穴や、スロット、尖った角、小さな半径などを持つ複雑な形状はプラズマ切断装置オペレーターにとって難題となります。ここでは直径が材料厚の 1.5 倍以下を小さな穴と定義します。従来のシステムで、これらの形状切断を行うことは困難なだけでなく、小さ過ぎたり、同心になっていない、などの許容範囲を超える部品の再加工や狭い角度の研磨、ドロス除去などの後処理は面倒なだけでなく、コストにも影響するものです。

多くの加工業者は、高価な高精度機械装置や価格の張るレーザーシステムを購入することで、これらの問題に対処しています。しかし、念入りなプログラミングを行い、切断品質変数に対する理解があれば、よくメンテナンスされたプラズマ切断装置と従来型のトーチを用いて、高精度機械装置なみの切断品質を達成することが可能です。

ボルト穴は円筒形であること

ボルトがしっかりはまるようにするには、穴の上部と下部の直径がほぼ均等でなければなりません。穴を円筒形にするための重要なパラメータは、切断速度です。プログラマーは、切断速度を直線速度として、毎分のインチ数 (in/min) または毎分のミリメートル数 (mm/min) を入力しますが、円を切断するためには切断中にプラズマアークが自然に低速化するのを補うためにトーチも減速します。ほとんどの CNC は、穴の切断速度の低下を考慮したアルゴリズムでこの現象を自動的に補正します。求心性制限と呼ばれるこの計算は、半径、トーチの加速、コーナーでの最小速度を考慮して、実際の円の切断速度を調節します。プログラマーやオペレーターは直線速度を加減して、円筒形により近い状態になるように実際の円の切断速度を最適化します。これは、同じ部品でも、ボルト穴は直線部分より低速度となるよう、異なるプログラミングが必要であることを意味します。

切断高さと電圧設定

切断高さ、あるいは電圧設定もまた、ボルト穴の切断品質に影響するもう一つのパラメータです。小さな穴では、切断高さは切断中同じになるように維持します。トーチ高さコントロール (THC) は、電圧でコントロールされるので、切断高さは通常 100 ~ 180 V のアーク電圧設定で決定されます。システムの反応性によって、小さな穴に THC を使用すると、切断品質を改良するより、悪化させる結果になることがあります。小さな部品の切断中には、切断中にトーチが高すぎたり、低すぎたりせず、また切断の最後にトーチがダイビングするのを防ぐために、TCH をロックアウトすることが必要な場合があります。THC はピアシング終了後に手動モードに切り替えることでロックアウトするか、穴の切断中にコーナーの低速化と THC なしを指定するようにプログラムし直すことができます。より最新型の反応性の高いトーチ高さコントロールでは、不適切な切断高さによる品質不良防止に役立つものもあります。

プログラミングの切り込みと切り逃げ

切り込みと切り逃げのタイプとサイズは、ボルト穴とスロットの切断品質に著しく影響します。2 つの主な欠陥は削り跡と突起です。削り跡は、アークが切断の最後に材料を多く除去しすぎることで発生します。プラズマアークが切りしろを横切ると、切断の初めに除去された材料が残りの部分に移されて小さなへこみや、場合によってはすくい取られたような窪みを形成します。これにより、穴が円形ではなくなります。

切り込みと切り逃げが十分にオーバーラップしていないと、突起が生じます。穴の削り残しがあると、中の切断されていない金属が突起して、ボルトが正しく入らなくなります。

適切な切り込みと切り逃げを見つけて、切断の開始点や終了点で削り跡や突起を最小限にすることは易しいことではありません。オペレーターは、試行錯誤により、適切な組み合わせを見つけることになります。一般に、面取りされた切り込みと非常に小さいあるいはマイナスの切り逃げ (マイナスのオーバーバーン) を残りの部分に使用することで最良の穴を切断することができます。小さな切り逃げ (プラスのオーバーバーン) では短く真っすぐな切り込みの方がうまく行くこともあります。

外側に向いた螺旋型切り込みは、穴の切断に非常に効果がある特殊デザインです。(注:これは、通常はプラズマ切断では使用しません。従来型のガス溶断切断で使用されているロック切り込みとは異なります。)外側に向いた螺旋型切り込みは、穴周囲の切断を開始する前に、装置がフルスピードに達し、アークが安定できるようにするので、切断中に装置の動きが非常に滑らかに維持できます。

ノズルサイズとアンペア数

一般に、アンペア数の低い低速の小さいノズルは、狭いカーフと細かい切断を達成します。

たとえば、200 A のプラズマシステムは (最大電力 200 A、2 mm のオリフィス、3 mm カーフ) は小さなボルト穴と複雑な形状を切断するには不向きと言えます。

仮に 12 mm の軟鋼に正確な 12 mm の穴を切断するには、小さなオリフィス 1-1/2 mm とカーフ幅 2 mm の 100 A のノズルを低速で使用した方が、より精密な穴が得られます。

一定のノズルで最高の切断を得るには、アンペア数をノズルの定格の 95~100% に設定するようにします。ダウンサイド:消耗品寿命の短縮と切断速度の低下。アップサイド:最小限の後処理でほとんど完了した部品。

高品位プラズマ

高品位プラズマは小型のノズルオリフィスと強いガスの渦を使用してアークを収縮させます。その結果、非常に狭いカーフでエネルギーが密なアークが生成され、細部にわたる切断や非常に小さい穴を切断することができます。従来型のプラズマシステムは 0.76 mm 以内の精度で切断し、3~5°、場合によっては 1° の開先が可能です。高品位システムは 0.25 mm の精度と 0~3° の開先で切断できます。4.76 mm の小さな穴まで正確な切断が可能です。

ボルト穴切断に関する 6 つのルール

  • 材料のピアシングや切断に定格されている最も小さいノズルサイズを用いる
  • マシン動作開始前に、ピアシングを遅らせることにより、フルアークの挿入ができるようにする
  • 電圧制御による THC に注意する
  • 丸みを帯びた、あるいは螺旋型の切り込みを使用する
  • いつもより遅い切断速度に設定する
  • 残りの部分には短い、もしくはマイナスの切り逃げを使用する